ドラクエよろず考察所

ドラクエに関するありとあらゆることを主観に基づいて考察しています。

冷徹 ホメロスのふわふわ白パンから考察する酪農と砂糖事情

前回の記事にたくさんのいいねとリツイートありがとうございました。今回は、「考察、ドラクエ11の世界の食」2回目、酪農・砂糖について考察していきます。なお、ブログ内で使用している画像は、様より許可を得て拝借しました。

7月7日追記

マシュマロより「パンを作るには油脂が必要、卵は特に不必要」との指摘を受けました。改めて白パンのレシピを確認したところ、確かにショートニングなどの油脂が必要で、卵はレシピに入っていませんでした。訂正の上、あらためてバターについての項目を追加しました。ご指摘、ありがとうございます。

 

ホメロスのふわふわ白パンを作るために必要な材料とは?

「冷徹、ホメロスのふわふわ白パン」とは、2017年にスクエア・エニックスカフェとドラクエ11のコラボが実施されたときのメニューの1つです。私は食べてはいないんですが、生クリームたっぷりのフルーツサンドウィッチでしたね。
その後、ホメロスの好物が公式で「フルーツサンドウィッチ」と発表されたので、ドラクエ11の世界には「フルーツサンドウィッチ」という食べ物が存在していることになります。
では、フルーツサンドウィッチは何からできているか、ちょっと分解してみましょう。

  • パン:小麦・塩・砂糖・イースト菌・油脂類(バター・ショートニングなど)
  • クリーム:乳・砂糖
  • 果物:リンゴ・バナナ・みかん・イチゴなど

つまり、ドラクエ11の世界にはフルーツサンドウィッチができる、これだけの食材が存在していることになります。では、ここからドラクエ11の世界の酪農と砂糖について紐解いてみましょう。

麦の栽培は畜産とセットである

前回の考察で、バンデルフォン地方では大規模な麦の生産が行われていると考察しました。また、ドラクエの世界ではパンが主食のようなので、麦の生産は世界中で行われていると推測できます。
さて、植物が大きく育つためには、窒素・リン・カリウムが必要です。これは肥料の主成分です。野菜や穀物・果物を育てるには肥料が欠かせません。いわゆる「肥えた土地」というのは、この3つの成分が多く含まれている場所です。特に、麦は肥料で格段に収穫量が変わる穀物なので、肥料なしで育てることは不可能でしょう(稲は元の土地が肥えていれば、肥料があまりなくても育つ)。
では、この3つの成分を含む肥料は何から作ればいいか。それは、家畜や人間の排泄物、いわゆる「うんこ」です。
牛・豚・鶏などの排泄物をおがくず、もみ殻などと混ぜて発酵させると堆肥になります。また、牛は麦畑を耕作する際、鍬(すき)をひいてもらいます。
さらに、ドラクエ11の世界の土壌がヨーロッパと同じタイプであると仮定すると、連作障害を防ぎ、土壌を回復させるために定期的に休耕させる必要があります。このとき、休耕地にクローバーや牧草を植えて牛や豚なんかに食べさせることにより、土壌回復と畜産を同時に行います。いわゆる三圃制農業ってやつです。(世界史で習ったかな?これが発展したのがノーフォーク式農業だよ)
つまり、麦畑あるところに畜産あり。畜産あるところに酪農あり、ということで、麦畑があるところなら必ず牛や豚が飼われている、はずです。
なお、家畜は春に生まれ、夏~秋にかけて牧草や畑の中にいるミミズなどを食べて育ち、秋の初めに繁殖用のものを残して全部食肉になります。人々はこの肉を食べて冬を乗り切るのです。

白パンは高級食材?

さて、これで麦と乳は同じ場所で生産ができることが可能だということが分かりました。次に注目したいのは「白パン」というキーワードです。

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 こちら、メダル女学園の学生食堂のキャプチャーですが、白っぽいパンがありますね。多分これが白パンだと思われます。「アルプスの少女ハイジ」を見たことのある人ならば、白パン=柔らかくふわふわしたパン。高級品。というイメージを持っていることもあるでしょう。
実は、食用の麦には大きく分けて以下のような種類があります。

  • 小麦:いわゆる小麦粉の元、麦類の中では寒さに弱い
  • ライ麦:寒冷地で育つ。小麦よりグルテンが少なくライ麦粉でパンを焼くとどっしりとした黒っぽいパンができる。
  • 大麦:麦みそ、麦飯、ビール、麦茶の材料

つまり、小麦は麦類の中でも温暖な地域でしか栽培ができない→収穫量が少なく、小麦を材料としたふわふわ白パンは高級食材?という推測も可能です。特に、デルカダールは標高が高いので、小麦粉を使ったふわふわな白パンは限られた人しか口にできなかったかもしれません。

乳を出すのは牛だけではない

では次に、クリームの材料、乳について考察していきましょう。乳は哺乳類が子を育てるために出すものです。乳=牛乳というイメージが強いですが、哺乳類の家畜であれば豚・ヤギ・羊でも乳を出すことが可能です。さて、ここで家畜の乳に含まれる乳脂肪分を比較してみます。

  • 牛:3.5%
  • ヤギ:2.9%
  • 羊:8.4%

羊は牛の倍以上の脂肪分がありますね。なんでこんな比較をしたかというと、乳脂肪分が高い乳ほどクリームを作るのが簡単だからです。乳を遠心分離器にかけて振り回すと脂肪分と水分に分離して生クリームができます。脂肪分が高い乳ほど生クリームがたっぷりとできるでしょう。現在、日本では牛の乳以外家畜の乳はほぼ飲用されていませんが、ヨーロッパではヤギ乳、羊乳も飲用され、チーズの原料にもなっています。しかも、牛に比べるとヤギや羊は標高が高く貧栄養の地でも育ちやく、さらに体毛が衣料になり、肉も食用可能です。(フルーツサンドウィッチの生クリームが羊乳で作られててもいいじゃないか!!)

というわけで、ドラクエ11の世界では生クリームがどんな家畜の乳で作られるのか、想像するのも楽しいかもしれません。

ちなみに、

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ダーハルーネの街にはこのようなどう見てもイチゴのショートケーキにしか見えないスイーツもありますが、ショートケーキは日本生まれで、欧米に逆輸入されたケーキです。(もしかしたら、日本の誰かがトラックにぶつかって11の世界に転生してケーキ職人になったかもしれません)

ドラクエ11の世界にイチゴがあるということはこれで分かりますね。

バターがあれば生クリームは存在している

さて、牛乳を遠心分離器にかけクリーム(乳脂肪分)と水分に分離する方法ですが、これは古代ギリシャよりバターを作るために行われていました。牛乳を攪拌し、生クリームを分離→さらに生クリームを振ることにより固形の乳脂肪分と水分を分離→固形の乳脂肪分に塩を加える。これが、バターの大雑把な作り方です。生クリームからバターを作る方法は有名ですが、牛乳からクリームを作るには、絞っただけの未加工な牛乳が必要です。現在、スーパーで売られている牛乳は出荷前にホモジナイズ処理がされており、脂肪分が細かく均一に牛乳内に分離しているので、牛乳から生クリームを作るのは絶対不可能ではありませんが、難しいでしょう。

なお、これは全くの余談でありますが、皇室の御料牧場で生産される牛乳は脂肪分が高く、殺菌のみのノンホモジナイズで出荷されるので、表面に乳脂肪分の膜が張ることもあるとか。こんな牛乳なら上質な生クリームが取れそうです。

砂糖はサマディの特産品?

さて、フルーツサンドウィッチや、スイーツに欠かせない調味料と言えば砂糖です。砂糖は、サトウキビ及びテンサイ(サトウダイコン)からできます。サトウキビから砂糖を生成する技術は、約1,000年くらい前からありましたが、テンサイから砂糖が生成できるようになったのは、18世紀のことです。
ゆえに、ドラクエの世界では砂糖はサトウキビから作られると仮定した方が自然でしょう。
さて、サトウキビは14℃~30℃までの温暖な気候で、水が豊富な地域で栽培されます。ということで、ドラクエ11の世界では、サマディ領内のダーハルーネ・ナギの村近辺あたりで作られていたかもしれません。
ダーハルーネ近辺でサトウキビ栽培が行われていた場合、砂糖が比較的容易に手に入りやすいため、スイーツが名物になったとしてもおかしくはないでしょう。
また、砂漠の真ん中にあって特に産業もなさそうな場所でサマディー王国が栄えているのは、砂糖生産と輸出のおかげかもしれません。現実の世界でも、アラブ近辺の国はヨーロッパに13世紀くらいから砂糖を輸出しています。

石油を使った機械類がないドラクエの世界に石油王は生まれない)

果物は世界を周る

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こちら、メダ女のキッチンのキャプチャーですが、バナナがありますね。ドラクエ11の世界ではどこの町でもパイナップルやリンゴ、バナナなんかの果物が見て取れます。つまり、果物は盛んに輸入・輸出が行われていたかもしれません。冷涼な気候のデルカダールでは、リンゴやベリー類がとれた可能性があります。

フルーツサンドウィッチは富と権力の証?

さて、話をフルーツサンドウィッチに戻します。フルーツサンドウィッチを作る白パン、生クリーム、果物はどれもデルカダールでも入手可能です。
ただし、標高が高くジャガイモが主食であった可能性が高いデルカダールでは、温暖な気候でしか栽培できない小麦粉で作られた白パン、家畜の乳をふんだんに使った生クリーム、そして果物を使ったフルーツサンドウィッチは、決して安い食べ物ではなかったと思われます。
少なくともジャガイモサラダの数十倍の値段がするんじゃないかなーと思います。そのため、フルーツサンドウィッチはごく限られた上流階級の人しか口にできなかったかもしれません。つまり、フルーツサンドウィッチは富と権力の味。ホメロスが好物だった理由も、味が大好きというより、自分の手に入れた力を実感するアイテムではなかったか?と想像してしまいます。

 

さて、次回はドラクエ11の世界の食糧事情第3回、食料は世界を巡る。輸出と輸入を支えた流通経路を考察する、ということで、食に絡めてドラクエ11の世界の物資運搬について考察します。