ドラクエよろず考察所

ドラクエに関するありとあらゆることを主観に基づいて考察しています。

貿易商だって?何を売ってくれるんだい?

大都会の暑さに耐えかねて、日本で最も有名な避暑地にやってきた管理人です。

今回は、貿易に関する考察第2回、貿易商が扱った商品と利益の出し方について解説します。なお、これはあくまでも管理人の主観によるもので、これが絶対正しいとか、これ以外の貿易商の書き方は間違っているというわけではありません。

 貿易商とは異国の品を売買する

商人とは、品物を仕入れて付加価値をつけて販売する人々です。貿易とは外国との商業取引のことです。つまり、貿易商とは「その国では生産ができず、高い値段を払っても欲しいものを売る」商売となります。つまり、A国ではたくさん取れたり作られたりしているが、B国では全く取れない、作れない、でも需要が高いという品物をA国で仕入れ、B国で売れば商人は大きな利益を得られます。これが、貿易の基本です。

香辛料が貿易の代表格っぽく扱われている理由

ドラクエの世界で商人と貿易といえば、ドラクエ3の船入手イベント、ポルトガの黒コショウです。黒コショウをはじめとする香辛料は、貿易の代表格というイメージがありませんか?(あるよな、あるって言えよ、あるだろう?)
その理由は、コショウをはじめとする香辛料が温暖な地域でしか取れなかったため、そして、ヨーロッパでの需要が高かったためです。
香辛料が入ってくるまで、ヨーロッパの調味料事情はとても貧しく、塩とハーブくらいしかありませんでした。コショウは、肉の風味をアップするだけでなく肉独特の気になる臭いを消してくれます。(実際にコショウ抜きで肉を焼いたりするとよくわかるよ)
さらに、コショウを使うとやや腐りかけの肉でもなんとか食べられたという超現実的な事情もあります。(当時、冷蔵庫なかったし、肉は貴重なんで腐りかけでも食べた)
というわけで、原産地(インド)では一山単位で取引された香辛料は、アラブを経由し、ヨーロッパへ来る頃には1粒=同じ重さの金くらいに高騰しました。
10円で仕入れたら10万円で売れるくらいの感覚です。そりゃあ、命かけて運ぶ価値があります。
こんな品物はほかにもたくさんありました。一例をあげてみましょう。

  • 絹製品:中国で製造された絹製品は紀元前にはローマまで運ばれた。それを運んだ道がシルクロード
  • さとう:サトウキビだって温暖な気候でしか取れないのでヨーロッパでは貴重品
  • 綿:実はヨーロッパで綿は気候の関係で育たない。綿はヨーロッパでは長貴重だった
  • 昆布:北海道で取れて船で日本海を回って一大消費地大坂まで運ばれた
  • ミカン:和歌山で取れて江戸(東京)まで運ばれたよ
  • 茶:戦争が起こるくらい重要な貿易品だった

昆布やミカンは日本の例です。日本は1つの国だから貿易と言えるの?という疑問がありますが、江戸時代の日本は藩が違えば別の国扱いで、昆布やミカンは収穫できる地域が限られています。つまり、立派な貿易品。実際、ミカン貿易で財を成した「紀伊国屋文左衛門」という人がおりまして、その屋敷跡と言い伝えられているのが、東京にある清澄庭園です。

貿易品は食べ物だけじゃないぞ

貿易品として扱われた品は、食べ物だけではありません。工芸品や金属も貿易品です。さきほど上げた綿や絹製品が一例ですね。今でこそ綿製品は普段着の代表格ですが、アメリカで大規模な農園が作られて生産されるまで、ヨーロッパでは超貴重品でした。文献には、「知ってるか?東の方には羊がなる木があるらしいぜ(羊毛は繊維の代表格)」という記述があるくらいです。中世では植物性繊維といえば麻だったので、綿製品は王侯貴族の衣装でした。
たぶん、ドラクエ11の世界でも、デルカダール・クレイモラン・バンデルフォン・ユグノアあたりは、気候的に考えて綿が取れないのではないかな?と推測されます。
プチャラオ村とかナギムナー村あたりでは取れそうなんで、プチャラ村あたりで取れた綿をホメロスが買取り、デルカダールやクレイモランで売れば大儲けできるよ。多分。
なお、これは余談ですが、中国の英語名である「チャイナ」は陶磁器、日本の英語名である「ジャパン」には漆器の意味があります。これは、近代、中国からは陶器が、日本からは漆器製品が盛んにヨーロッパに輸出された名残です。

貿易は高度な情報戦である

さて、このようにいろいろな品物が売買される貿易ですが、大切なのは「何を、どこが必要としているか」という情報です。先ほどのコショウを例に挙げると、14世紀までコショウはインドでしか取れないと思われていましたが、実は東南アジアでも取れることがわかり商人がそこからコショウを買取り、ヨーロッパに輸出したので、一時的にコショウの供給量が増大し、コショウの価格は暴落します。
つまり、需要と供給のバランスが崩れると「命を懸けて運んだ品物が二束三文でしか売れなかったよー」となるわけです。
輸送手段が、船・徒歩・動物しかない世界では、1つの品物を運ぶために数か月~1年をかけます。ですから、どの品物をどのくらい仕入れるか、非常にシビアな情報戦が繰り広げられました。また、貿易商同士で「供給過多になりすぎないように、めっちゃ需要あるけど、この品物の輸出量は抑えようぜ」という協定も結ばれたりします。
さらに、「いや、この品物めっちゃ貴重なんだよ。仕入れるの苦労したんだよ。この国でこの品物持っているのはお前だけだよ」と購買欲をくすぐって、二束三文の品を高額で売ることも珍しくありませんでした。
一例をあげると、安土桃山にフィリピンから日本に輸入された「ルソンの壺」です。
この壺、フィリピンではタダ同然の品でしたが、日本では「千利久」が「この壺、めっちゃ高価で貴重やで」と言ったので、高値で売買されるようになったものです。
つまり、これが商人の話術です。
たとえば、ホメロスがサマディーの王様に
「いや、この植物はすごく貴重でしてね、わが国デルカダールでもめったに取れないんです。王は、この植物を庭に植えられて愛でておられ、それを貴族がこぞって真似するありさま。さ、この植物、今なら1000Gでお譲りしましょう」
と元値が10Gの雑草を売りつける、というやり取りがあるかもしれません。(妄想)

権力者を味方につけて貿易ルートを独占せよ

貿易商にとって、商品と同じくらい大切なのが貿易ルートです。品物を運ぶ道筋が確保できないと、貿易は成り立ちません。そして、貿易船や隊商が通る道筋は、商品や売上金を狙う強盗の出没地帯にもなりやすいものです。ですから、商人たちは権力者にお願いして、貿易ルートの安全を守ってもらっていました。
なので、デルカダールの騎士団の任務の1つに「貿易ルートを魔物から守る」というものがあっても、全然おかしくないわけです。
また、「いっそ、この貿易ルートを国が独占しちゃえばいいんじゃね?」という考えも出てきます。実際にコショウ貿易では14世紀にオスマントルコ帝国が中東を支配した為、インドとヨーロッパをつなぐ香辛料陸路ルートが完全に独占され、ヨーロッパの商人は香辛料の貿易ができなくなりました。これに怒ったポルトガルが、「じゃあ、海路でインドまで行ってやる!!」と造船技術を発達させて海路開拓に乗り出したため、世は大航海時代を迎え、やがてアメリカ大陸の発見につながったのです。(この説明、かなり大雑把なので、興味ある人は自分で詳しく調べてね)
この逸話が、ドラクエ3の船入手イベントに使われているわけなんですね。(最もドラクエでは「黒コショウやったら、船やるよ」というので、順番が逆)
つまり、貿易商にとって権力者とのつながりはなくてはならないものでした。
(ここでホメロスとモブ権力者との関係に無限の想像ができますね)

ホメロスが騎士から貿易商に転職した場合、今までの人脈を生かして暗躍しまくることでしょう。

 

この時点で3千文字超えました。きりがいいので今回はここまで。次回、「グレイグが作った農作物を輸出せよ、貿易商ホメロスの活躍」と題しまして、実際にある商品を貿易品として売りたい場合はどうするか、シミュレーションをしてみます。

 

 

 

貿易商になりたいって?よろしい、ならば勉強だ

今回も前回に引き続き、キャラブックのセリフから考察を行っていきます。ホメロスのインタビュー記事に、こんなセリフがありました。「別な職業に就くなら、貿易商がいい(意訳)」ならば、考察せねばなりますまい。今回は、貿易商の定義、役割、なり方なんかを考察していきます。

 貿易商は商人兼文化と情報の伝達人

ドラクエの世界には3から「商人」という職業が登場します。

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ほかの職業が西洋風の格好をしているのに、なぜ商人だけが中東っぽい格好をしているのか。これは、おそらく十字軍が活躍していた時代(9~11世紀)における貿易商のイメージだと推測されます。十字軍が中東のエルサレムに到達できるようになったということは、中東から人々もやってこれるようになった、ということです。ヨーロッパから中東へ行ったのは軍隊でしたが、中東からヨーロッパにやってきたのは商人でした。彼らは、木綿や香辛料・砂糖をヨーロッパに伝え、さらにヨーロッパの文化に大きな変化をもたらしました。商人が活躍すれば、物だけでなく文化や情報も行き来します。つまり、貿易商というのは、物資だけでなく文化と情報の伝達人なのです。

貿易商といえば船でしょ

貿易商と言えば、大抵「船」を所有しています。答えは簡単で、船が最も多くの荷物を積んで早く、遠くまでいける輸送手段だからです。
物を運ぶには、人が持つ、馬やロバなどに積んで運ぶなどの手段がありますが、これではせいぜい数百キロの荷物しか運べません。しかも、人も動物も道なき道を進むことはできず、荷物を運び続けるには、食料・水・適度な休憩が必要です。
つまり、人と動物だけで荷物を運ぼうとすれば、道を整備し、商品のほかに水と食料を持って移動しなければなりません。あー、めんどくさい。
一方、船は川や海という限られた場所ではありますが、歩いたり動物に乗ったりするより早く、多くの荷物を運ぶことができます。しかも、船は水も食料もいりません。ですから、貿易商にとって船は必須の商売道具なのです。

貿易が道を伸ばし村を作る

とはいえ、船だけでは目的地まで荷物を運ぶことは難しいでしょう。貿易商が扱う商品すべてが海辺でとれるとは限りません。また、海がない国同士で貿易をしたい場合もあるでしょう。ですから、商品を人や動物に積んで目的地まで運ぶ手段も必要です。これが隊商(キャラバン)です。大人数ほどより多くの荷物を運べ、安全性も高くなります。さて、隊商が2つの地点を行き来すれば、道ができます。道ができれば商人以外の人も行き来するようになります。行き来する人が多くなれば、その人たちに食料や水を売って生活する人たちの集団もできます(宿場町)こうして、貿易が広がれば広がるほど、道が伸びて人が移動し、生活圏が広がっていくのです。

ドラクエ11世界の航海術を考察するその1 11の世界では外海を渡る必要がない?

さて、ドラクエといえば船です。だいたい物語の序盤広範に船が手に入り、一気に行動範囲が拡大しますね。

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ドラクエ11の船、シルビア号です。この船を初見したとき、「小さい」と思いました。

この船は、形状から判断するとカッター帆船と推察されます。カッター帆船とは、一本マストと縦帆(赤い帆の部分)を備えた小型帆船で、喫水が浅く、小回りがきき、主に沿岸ぞいを走る船です。
念のためにほかのナンバリングを確認すると、3のマストは3本、5は2本、8ではアルバート家が所有する船が2本マストです。マストの数が増えるほど帆の数は増え、船も大きくなります。帆が増えれば推進力も大きくなってより早く、より遠くまで行けるようになりますが、その反面、喫水が深くなるので沿岸部を航行することが難しくなります。

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さて、ここでドラクエ11の地図を見てみましょう。この世界の海は、大半が内海です。地中海とか瀬戸内海とか黒海を想像してください。
バンデルフォン、ユグノアは内海に面しており、 デルカダールは内陸に位置していますが、海に直結する大河があります。内海に面していない唯一の国はクレイモランですが、ソルティコの水門を渡れば、沿岸沿いを航海してたどり着くことが可能です。
つまり、ドラクエ11の世界は太平洋とか大西洋のような何もない外海を航海する必要がない、と推測されます。
だから、カッター帆船で十分なんですね。多分、沿岸沿いをいかない航海として最も距離があるのは、内海の真ん中を突っ切るくらいじゃないでしょうか?

ドラクエ11世界の航海術を考察するその2 航海術は学問の塊だ!!

ツイッターでもつぶやきましたが、航海術は学問の複合技術です。そもそも航海術ってなにかというと、「船が一体どこを走っているのか知る」技術なんですね。ちなみに、船を操るのは操船技術といいます。
海には目印がありません。そのため、闇雲に船を走らせると1時間ぐらいで、ここはどこ状態になります。船の位置を知るには、緯度と経度を計算しなければなりません。
緯度=地図の横線 赤道が0度、天頂と赤道の角度で表される。正午に水平線と太陽の高度角を測定するか、北極星と水平線の高度角を計算して出す。
経度=地図の縦線、緯度と同じ方法で求められるが、正確な時刻がわからないと正確な計算ができない。そのために定められたのが、グリニッジ標準時。経度が1度ずれれば距離が100kmずれる正確な標準時がわからないと、月と太陽、もしくは月と黄道付近の恒星の距離、および角度を計算する月距法を用いる

コレ、理解できます?書いていて自分もあんまり理解できてません。うんと簡単に説明すると、月と太陽・恒星の位置を毎日測定して角度を計算し、そこから船がどこにいるか測定します。これが、航海術の基本です。つまり、最低でも天文学と数学の知識と計算能力がないと船は操れません。
ドラクエ11の場合、沿岸部を航行するんでそれほど正確な緯度経度がわからなくても航海できる可能性はありますが、その代わり、地形を覚えておいて「ここはどこら辺だ」と認識しておく必要があるため、地理の知識が必要です。
さらに、潮の流れも把握しておかなきゃいけません。

なに、航海術って天才しか身につけられなくない?

ドラクエ11世界の航海術を考察するその3 人心を掌握せよ!!

ちょっと航海術から話はずれますが、船を動かすには最低でも10人以上の人出がいります。1人で動かせる船は小型ヨットがせいぜいです。つまり、船は小さな社会であり、船長は人心を掌握しておかないと、不満がたまると謀反を起こして殺されます。(よくあった)

現実の社会でも、外洋の航海中に犯罪が起きた場合、船長の権限で身柄を拘束しておけます。人が亡くなった場合、水葬を命じることができます。(つまり、悪人が船長にななっちゃうと、遠洋まで船で運んで××すこともできちゃ)(商法に基づく権利)

なので、船長は部下から慕われてなきゃいけません。だからホメロス、部下に人気あったのかもしれません。

閑話 ホメロスは人間GPS

航海術を身につけた人は、船の上以外でも自分がだいたいどこにいるかわかるそうです。星と月の位置、山の形、地平線と北極星の角度、昼なら太陽と地平線の角度が分かれば、「あ、今だいたいここにいるね、時刻はだいたい何時」と計算が可能です。つまり、人間GPSです。そんな人間に地図を渡せばどうなるでしょう。

答え:一度も足を踏み入れたことがない土地でも、最短時間で正確な目的地にたどり着くことができる。

これは、行軍するうえで最も大切かつ重要なことです。軍隊が道に迷えば、それだけ体力と食料を消費します。目的地に到着するまでの日数と時刻を読み間違えれば、深刻な食糧不足に陥る可能性もあるでしょう。
しかし、航海術を身に着けたホメロスが軍を指揮すれば、この恐れはほぼなくなります。しかも、シビアな計算能力で必要な食糧や武器の量を割り出し、兵士の体力を温存させながらの行軍だってできるはずです。
こんな人間が国を裏切って魔物についたんです。怖くない?絶対怖い。よくデルカダールの最後の砦が落ちなかったよね。もしかして、司令、遊んでた?

 

長くなったんでここで1度ブログをまとめます。次回、貿易商が扱った商品と農業との連携を解説します。

 

 

 

ドラクエの世界で農業したいって、ここで学んでいくかい?

どうも、ドラクエ11Sのネタバレと、ユアストーリーのWショックに打ちのめされていた管理人です。今回からドラクエの「住」と称してお城や町の解説をしていく予定でしたが、近頃発売になったドラクエ11キャラブックでグレイグが「農夫」、ホメロスが「貿易商」になってみたいという夢があったと知りました。ならば、考察せねばなりますまい。今回から2回に分けて、ドラクエの世界で農業する方法、そして貿易商として働く方法を私の主観に基づいて語っていきます。なお、これはあくまでも主観です。コレが正しいとか、公式が間違っているという意図の記事ではありません。ご了承ください。

 農業に必要なのは、土地・人・家畜

さて、ドラクエ11の世界で農業をしたい場合、まず思い浮かべる画像はこちらだと思います。f:id:kakitubata88:20190628154744j:plain

バンデルフォン地方の麦畑。ドラクエのナンバリングで明確に「ああ、農業をやっている」とわかるシーンはこれが初めてではないでしょうか?(ちょっとした畑の描写はあったかもしれない)
そして、キャラブックでグレイグは言っていました。「俺の剣が必要なくなったら、麦畑を作りたい」と。
(なんか、現実に疲れた男って農業したがるよね。サノスとか)

では、ここからグレイグが将軍を辞めて農業をするために必要なものをあげていきます。

1.土地

農業をするには、土地が必要です。ドラクエ11の世界地図を見る限り、あの世界は山が多く平地が少ない、全体的に農業には不向きな土地です。ですから新しく農業をするなら、土地の開墾から始める必要があります。
(グレイグさん、ちょっと武力で隣の国から土地を奪ってきてちょうだいって選択もありますけど)

そのため、グレイグは2~3年くらい食いつなげるくらいの貯蓄を持って農業を始めてください。それかまずジャガイモを作って食いつなぎましょう。

2.人手

農業、特に小麦や米など穀類を大規模に作るなら、人手が必要です。最低でも20人以上の集団を作り、農作業に従事しましょう。実際、ドラクエ11の世界では、麦作が大規模に行われていた証拠があります。

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はい。風車です。風車の目的は様々ですが、農地にある風車はほぼ100%、穀類を脱穀し、粉にするために用いられます。小麦を脱穀し、粉にする最も原始的な方法は、石臼を用いることですが、収穫量が増えれば人力で石臼を引いていては製粉に間に合いません。そこで、風車・水車を用います。ですから、バンデルフォン地方では、国が滅びた今でも数百キロ単位で麦の収穫があるんでしょう。そして、米や麦はちまちま作っていては採算が合いません。ですから、絶対に人では必要です。

グレイグが将軍を辞するとき、もしかしたら30歳以上の兵士は「いや、俺も年だし」と一緒に農業を始めたいとついてくるかもしれません。そんな兵士たちとグレイグが力をt合わせて農業を始めたら、ちょっと萌えます。

3.家畜

このブログの第2回、酪農と砂糖の事情でも説明したように、農業をするときに欠かせないのは肥料です。肥料の主成分は、窒素・リン・カリウムで、特に、麦はこの3つがないと、まともに育ちません。この3つがふくまれているものはなるものはなにか、それは、家畜や人間の排泄物、つまり「うんこ」です。うんこを発酵させ、おがくずとまぜることで、堆肥ができます。また、牛は鋤(すき)をひいててくれるので、大切な農業のパートナーでもあります。

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こちら、ドラクエ11の世界で、牧畜が行われている証拠、麦稈ロールです。麦稈ロールとは、麦を収穫した後の麦わらを丸めたもので、これが牛・羊・山羊の寝床(敷き藁)とエサになります。(機械じゃないとこんな大きな麦稈ロールは作れないけどね)

つまり、これがあるってことはバンデルフォン地方で農耕と牧畜が同時に行われているということです。

グレイグが小麦を収穫するまでの道のり

1.開墾

グレイグが体1つで農業を始めたい場合、まず行うのは開墾です。荒れ地から石・木の根・草などを取り除き、土地に窒素・リン酸・カリウムをいれて肥やし、PH値をややアルカリ性に保ちます。土地が酸性に傾き過ぎている場合は、石灰を撒いて中和してください。ここまで約1年以上かかると考えましょう。最低でも5hくらいは開墾してください。そうしないと三圃式農業ができません。なーに、たかだか東京ドーム1個分です。牛だって立派な戦力になるよ。大きな石や木の根は牛に綱つけて引っ張ってもらいましょう。何もない土地ができたら、牛や馬に「鋤」という道具をつけて耕します。これで、土を掘り起こし、砕き、空気を含ませ、肥料を混ぜ込み、やっと野菜と穀類が育てられる「畑」ができます。ここまで約1年、荒れ地の具合によっては2~3年かかると考えてください。それまで、グレイグは貯金で食いつなぐか、別の仕事をしながら開墾しましょう。

 

2.三圃式農業を始めよう

三圃式農業というのは、農作地を3つにわけ小麦やライ麦など冬に育つ麦を育てる場所、豆など夏に育って秋に収穫できる場所、牧草やクローバーを育てる休耕地をローテーションする方法です。
なぜ、休耕地を作るかというと、麦は土地の栄養をガンガン吸って大きくなるので、何年間に1度は休ませないと、連作障害を起こすのです。ちなみに、米は連作障害を起こしません。だから、日本では三圃式農業や畜産と農業の併用が発達しませんでした。
ちなみに、クローバーは土地力を回復させるのにも役立ち、豚・牛・羊のご飯にもなります。家畜が牧草を食べて排泄することで、土地は回復するのです。だから、農業しながら家畜の世話も頑張りましょう。なお、羊や牛を飼った場合は、もれなくミルクと羊毛もとれます。また、豚の場合はおいしいお肉になります。

3.小麦やライ麦はパンに、大麦はビールに

さて、小麦・ライ麦・大麦は9月下旬に種をまき、越冬をさせ、夏に収穫します。つまり、麦農家で冬は農閑期ではない。覚えておきましょう。小麦、ライ麦はパンの材料になります。小麦はふわふわしろパン、ライ麦はどっしり黒パンの材料です。大麦はビールとか麦茶になります。ライ麦の方が荒れて寒い土地でも育つので、グレイグが農業を始めた場合、最初の1~2年はライ麦、3年目くらいから小麦がやっととれるようになるかもしれませn。「最初にとれた小麦で作ったんだ、食べてくれホメロス」とふわふわ白パンを作るグレイグ、萌えますか?萌えますね。

4.畑の隅でカブとジャガイモ植えようぜ

さて、このように小麦中心に農業をしていますが、小麦ばっかり作っていても食料が不足します。畑の隅にカブとかジャガイモを植えましょう。ジャガイモはブログの第1回で説明したように、パンの代わりに主食になります。カブは短期間に大きくなって長期保存が利く野菜です。カブとジャガイモがあれば、ビタミンもとれます。ちなみに、童話の「大きなカブ」は比喩でも何でもなく、豊かな農地の象徴なんです。「大きなカブがとれるくらい立派な農地持ったおじいさんすげー」って話なんですよ。あれ

5.タンパク質は豆でとれ!!

小麦で作ったパンとジャガイモで炭水化物を、野菜でビタミンとミネラルを補給できるとして、まだ足りないものがあります。それは、タンパク質です。グレイグの体格を維持するには、タンパク質は欠かせません。でも肉は貴重なんで、普段のタンパク質は豆でとります。豆は、春植えの秋収穫なので麦と平行して育てられます。グレイグが農業をした場合、毎日の食事は、パン・豆・ビール、たまにちょっぴりのお肉、となることでしょう。肉、貴重だよ。肉。

6.肉は秋口に作る

さて、小麦を作る場合、必ず家畜の力が必要と前述しましたが、家畜はずーっと飼っておくことはできません。家畜は生きている限り餌を食べます。牧草は秋に枯れます。ですから、麦稈ロールが越冬する際の食料になりますが、それでも家畜全部はまかないきれない、というケースが大部分です。なので、秋になると家畜にキノコとかどんぐりとかたっぷり食べさせて、繁殖用の一部を残してトサツします。1頭の豚から約250kgのお肉がとれるので、秋口にトサツし、ベーコン・ハム・ソーセージ・干し肉を作っときます。これが越冬の食料になります。

収穫物の一部は税金

さて、こうやって一生懸命育てて作った小麦ですが、3~4割は税金でとられちゃいます。残った小麦でグレイグさんは次の収穫まで過ごすわけですが、これでは現金収入の道がありません。さて、こまった。さあ、ここで貿易商が登場します。

「はっはっは、グレイグよ。貴様に現金収入の道を与えてやろう!!」

ということで、次回は貿易商になる方法と貿易商が扱った品々を紹介します。

ではでは!!

 

 

 

 

 

 

 

 

ドラゴンクエスト ユアストーリーは、禁じ手の宝庫で最低の映画だった

いつもこのブログではドラゴンクエストの世界に関する考察をやっていますが、今回は番外編ということで、ドラゴンクエスト ユアストーリーの感想を述べたいと思います。ただし、映画が面白かったという人は、ここでそっとページを閉じてください。好意的な感想はほぼありません。また、ネタバレがっつりしてますので、これから映画を見に行くという人は、最初の項目だけ読んでやっぱりページをそっと閉じてください。

なお、私はドラクエ5はリアルでプレイし、現在も11Sの発売を心待ちにしているドラクエファンです。

 

ユアストーリーをネタバレなしで感想を述べる

これからユアストーリーを見る予定の人向けに、まずはネタバレなしの感想です。

この映画は、有名なタピオカ店でタピオカドリンクを注文したら、店員が、スーパーで購入できる紅茶のティーバッグと牛乳、業務用の冷凍タピオカを目の前にずらっと並べて、「このタピオカ、1人分の原価は50円なんだ。よくそんなものに600円も払えるね。もっとましなお金の使い方しなよ」と鼻で笑われるような感じです。
その後、店長が店員をたこ殴りにして「ごめんな、こんものでも君たちにとっては心がウキウキする飲み物なんだよな」と、笑顔で完成されたタピオカドリンクを差し出してきますが、はたしそのドリンクを笑顔で「おいしい」と飲めますか?
ユアストーリーはそんな映画です。なんだかよくわからないと思われるかもしれませんが、本当にこんな構成の映画なんです

では、次の項目からがっつりネタバレ」感想を述べていきます。

で、この映画は誰に見てほしかったの?

これが、私が映画を見終わった後、まずはじめに思ったことです。この映画は一体誰を対象にした映画だったんでしょうか?

  1. かつてドラクエ5をリアルタイムでプレイヤー(今の技術でよりリアルになったドラクエ5の世界を楽しんでほしかった)
  2. これからドラクエのゲームをプレイしようと考えている子供(ドラクエってこんなにわくわくドキドキするコンテンツなんだよと知ってほしかった)
  3. ドラクエをプレイしたことはあるが、5はやったことない人(ドラクエ5の魅力を知ってほしかった)
  4. ドラクエが大嫌いで、はやくシリーズが終わってほしい人
  5. ゲームそのものをみくだし、くだらないと思っている人

ドラクエが映画化するんですから、1~3のどれかを対象にしていると思うじゃないですか。でも、多分監督は4か5に該当する人にこそ、映画を見てほしいと思っているのではないでしょうか?あの構成とオチはそうとしか考えられません。

王道を馬鹿にするものは失敗する

ドラクエは、物語としては王道中の王道でとても単純で、「なんらかの基準によって選ばれた勇者が絶対的な悪である魔王を倒す」これだけです。
ゲームなんですから、あまり複雑な話にするとシステムも同時に複雑になって楽しめません。ゲーム機の進歩によってナンバリングが進むにつれ、多少話は複雑になりましたが、基本的なストーリーは同じです。
世界観もゆるゆるで、「ま、そこはゲームと言うことで許してね」みたいな設定がたくさんあります。
だからこそメディアミックスはやりがいがある反面、難しいと思います。
しかし、「ダイの大冒険」という素晴らしい漫画も生まれたので、ドラクエはストーリーが単純かつイベントが多いので、そのままじゃ映画化は難しいという意見は、いいわけにすらならないと思います。
多分、山崎監督は王道な展開はあまりお好きではないのでしょう。だからこそ、最後にどんでん返しを入れたんだと思います。しかし、そのどんでん返しが絶対にやっては行けない類いのものだったので、結果、「令和のデビルマン」と言われるほど無残なできになってしまいました。がっかりです。

この世界が虚構だってことは100も承知だ!!

この映画のどんでん返しというのは、実は今までの世界は全部虚構だったとラスボスがばらし、世界を消そうとすることです。全然目新しくないですね。
「現実だと思った世界が、実は虚構だった」という映画は古くから無数に存在します。特に有名なものを1本上げるなら、「マトリックス」でしょう。

山崎監督はもしかしたら、ユアストーリーをマトリックスと同じようなものにしたかったかもしれません。
しかし、マトリックスは映画の序盤で主人公が生活していた世界が虚構とわかり、そこからストーリーが動き出します。
一方、ユアストーリーで絵だけは美しく雑に描かれた世界が虚構であると知らされるのは、ラスボスが登場する映画終盤です。
しかも、観客は映画の世界が虚構であると知らされても何のカタルシスもありません。ラスボスは「いや、ほらゲームなんてくだらないからさ、早く現実に戻りなよ」と説教してゲームを消そうとします。
なんですか、これは。私たちはドラクエの映画を見に来たんです。この世界が虚構であるなんて100も承知で、どのように映像化され、ストーリーが紡がれるか楽しみにしていたんです。
それが最後に「これ、ゲームだし」と言われても「知っとるわ」としか言えません。

ネタばらしが遅すぎる

この映画、前半はいいんだよ。という意見もあります。だから、私もちょっとは期待していました。しかし、この映画は前半もひどすぎます。あまりにひどいところが多いので箇条書きで纏めます。

  • ビアンカとの出会いから幼き日の冒険をゲーム画面で説明して終わり。どんなやり取りがあって彼女に主人公がどんな感情を抱いたか、まったくわからない。
  • ヘンリーと出会って1分後に彼が魔物にさらわれ、3分後にパパスが殺され、5分後に二人が成人奴隷になり、7分後に神殿から脱出する。この2人が相手にどんな感情を抱き、友人として付き合っているのか全く分からない
  • 父がゲマに殺され、自分は奴隷にされ、母が捕らわれているのに、復讐を誓うとか、頑張って母を救い出さないと、という感じがみじんもない主人公。しかも、「僕、勇者じゃないし」とおちゃらけながら旅をして何だか知らないけどスライムが仲間になる。まったく応援できないし、レベルアップしていく様子がみじんもない
  • フローラに会ったとたん、「母さんを取り戻し、父の敵を討つ」とかいう目的がすべて吹き飛び、結婚一色で話が進む
  • ビアンカが唐突に表れ、「何でも話せて背中を預けられる人」と主人公が言うが、そんな描写は今まで1個もなかったので、「はあ、そうですか」以外言えない。
  • 結婚を申し込む描写が異様に長く、しかもフローラとビアンカはまるで面識があるかのよう。
  • 最終的にフローラは自ら身を引くが、主人公とビアンカが相思相愛であるかのような描写が0だったので、「なんで?」としか思えない
  • 結婚しても旅をしている様子が全くなく、山小屋みたいな家に帰ってきて唐突に妊娠、出産する(ねえ、パパスの敵討ちと母の救出は?ねえ。どうなったの)
  • 天空の剣を握ったととたん、最強の勇者になる8歳の幼子(天空の剣って核爆弾か何か?)
  • 時折挟まれる、勇者ヨシヒコ張りのお寒いギャグ
  • かなり力を入れて描いただろうことは伝わる過去の自分と会うシーンだが、今までの話が薄っぺらいうえに雑なので感動が全くない
  • リュカ・エル・ケル・グランバニアという名前は連呼されるが、グランバニア王国自体が全く出てこず、王子であるというネタばらしもない。

 

 そして、ラスボスが登場し、映画がラスト5分になったところでユアストーリーは唐突に次のようなネタ晴らしをします。
「いや、ごめんね。この映画実はドラクエの映画化じゃなくて、ドラクエのゲームをしている人間のプレイ動画だったんだ」

ああ、プレイ動画だったら設定が雑なのも早回しで話が進むのもまあしょうがないか、と納得きると思った?できないよ。しかも、本当の主人公が出てくるのは「今からゲームを始めます」というわずか2分弱のシーンだけ。そこで、主人公の子供時代の話をスキップ、という選択をする場面があり、これだけで今までのシーンが恐ろしく雑だった説明をすべてつけてしまいます。そして、本当の主人公の出番はこれで終わりです。

「現実を見ろ」を安易に使う無神経ぶり

さて、この映画のラスボスはコンピュータウィルスです。しかも、どこかの誰かがいたずら目的に作ったもので、主人公はただ単純にゲームを楽しんでいた時に、いきなりこれに襲われます。
通常、架空の世界を現実に戻そうという力が働くのは、主人公が架空の世界で生きていると、重大な危機がやってくるからという理由がほとんどです。しかし、観客は、この主人公がなぜこのゲームをプレイし、何時間楽しんでいるのか全く知りません。ゲームを続ければどうなるのかもわかりません。いや、わずか2分だけ流れた映像から見ると、働きながら適度にゲームを楽しんでいるんだなとしか思えませんでした。
それなのに、いきなりコンピュータウイルスは言い放ちます。
「現実見ろよ」と。

これ以上無神経で悪意に満ちた言葉があるでしょうか。このセリフは主人公に向けられたのと同時に、ゲームプレイヤーとしての「現実」の主人公が全く見えないために、観客に向けられたものでもあると思ってしまいます。
「ほら、お前たちが1800円も払ってみた映画なんて、結局指先一つで虚無になる映像なんだよ。なんでそんなのに夢中になってんだよバーカバーカ」っていきなり映画の中から言われたのです。
山崎監督はこの瞬間、何かを夢中になって楽しんでいる人間に冷水をぶっかけて悦に入る、最低の人間になってしまいました。
その後、いきなり出てくるスライム型のシステム管理者。そして、ゲームの愛がウィルスに勝つという展開。
「ほら、ゲームへの愛はウィルスにも勝るよ」
と言いたいかもしれませんが、現実見ろよの悪意の前にこんな取ってつけたようなハッピーエンドへの展開は、言い訳にすらなりません。

で、この映画、結局何だったの?

この映画を見た人の感想はこれに尽きると思います。私は、山崎監督に中途半端に美しい映像で雑に5のダイジェスト版を見せられたあげく、「映画やゲームに夢中になるなんてあんた馬鹿だね」と思い切り罵倒にされたとしか思えません。
もしかしたら、山崎監督は、ドラクエの映画とドラクエをプレイする人をつないで、主人公=自分という気分を出したかったかもしれません。
ならばなぜ、最初からあの世界を「虚構だ」と説明しなかったのか主人公がゲームをプレイするあの映像から映画を始めなかったのか、と思います。
もし、主人公がゲームをプレイしはじめる映像から映画が始まり、ゲームの世界を壊そうと侵入するウィルスと戦い、ゲームをクリアし、「やった、俺はプログラムだけれど生きている人間同様に大好きなお前たちを守ったよ」といえば、私たちも「なるほど、こういう話だったのか」と納得したでしょう。
結婚のシーン以外全部雑で書割みたいなひどい演出も、「ああ、何週もゲームすればそうなっちゃうよね」と納得できたでしょう。
さらに、ゲームをプレイ中ヨシヒコばりのギャグがあってそれに突っ込んでも
「ああ、そういえばそんな突っ込みしたな」と納得で来るんじゃないでしょうか?
たとえ一部のゲーマー向きであっても、この方がよほどいい映画に仕上がった。
ドラクエ5をリアルでプレイし、今でもドラクエ大好きな私はそう思います。

クリエイター志望者はぜひ、この映画を見よう

漫画なり、小説・映画なり何でもいいのでクリエイターになりたい人は、ぜひこの映画を見ましょう。やっちゃいけないこと全部やってます。これと同じことをしなければ、まずまずいいもの作れるんじゃないでしょうか。それほどひどい映画でした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

食料から考察するドラクエ11世界の流通と保存技術

さて、早いものでドラクエ世界の食料考察も4回目を迎えました。今回は、「食料から考察するドラクエ11の世界の流通と保存技術」を主観的に解説していきます。なお、キャラブックの内容を一部ネタバレしておりますので、ご留意ください。

ドラクエ11の世界の物流方法を考察する

前回までの記事で考察してきたように、ドラクエ11の世界では良質の小麦が取れる地域が限られていたり、北国に南の国で取れた食べ物が売られていたりします。つまり、「食物が世界中に輸送できるほど、物流が発達している」と考察することができます。食物は、米や小麦・ジャガイモといった長期保管できるものを除き、「腐敗」というタイムリミットがあります。腐敗しやすい食物の特徴としては、以下のようなものを上げることができます。

  • 水分が多い
  • 栄養豊富(雑菌が繁殖しやすい)

つまり、生野菜・果物・乳製品・調理済みの食品・生肉・生魚、これらは腐りやすく、長期輸送に不向きです。
では、今度はドラクエ世界の輸送方法とそれぞれのメリット・デメリットを考察してみましょう。

  • 徒歩:どこでも運べるが、一度に運べる量が少なく輸送に時間がかかる
  • 馬・馬車:徒歩よりも早く、一度に運べる量は多いが行ける場所に限りがある
  • 船:行ける場所は限定されるが馬車以上のスピードが出て、一度に運べる量が多い。
  • ルーラ:ドラえもんのどこでもドア(便利だけど非現実的)

この中で、最も移動速度が早いのがルーラです。ルーラを使えば、生肉だろうが生魚だろうが、できたての料理だろうが一瞬で遠くまで運ぶことができるでしょう。しかし、誰もが手軽にルーラを使えて、輸送手段の主流になるような世界なら、そもそも馬車も船も発達しないし、街道の整備だってされないので、ルーラを使う輸送方法は主流ではない、と考えます。
ということで、ドラクエの世界では物資の輸送は徒歩・馬・船が主流であると考えていいと思うのです。

長期輸送に耐えられるよう食料を加工せよ

さて、輸送手段が確保できたら、次は長期輸送に耐えられるように食物を加工する方法を考えてみましょう。
冷蔵庫・冷凍庫がない世界で食物を長期保管するには、以下のような方法が考えられます。
ヒャドを使って凍らせろという意見は受けつけない

  • 水分を抜こうぜ(干物・干し肉・干し野菜にしてしまえ)
  • 塩漬けにしようぜ(ベーコンやハムだって塩漬けの一種だ!!)
  • 砂糖漬けにしようぜ(知ってた?ジャムって保存食なんだぜ)
  • 酒につけようぜ(アルコールも防腐剤だ!!)
  • クエン酸や酢酸につけようぜ!!(酢漬けとレモンマリネは長持ちするぜ)
  • 生きたまま運べよ!!(肉の保管方法はこれが一番)
  • 脂で覆ってしまえ(ペミカンって非常食です)

なお、以前戦国時代の食料の作り方を再現した方の話によると、戦国時代の作り方そのままで料理を作ったところ、「塩辛くて食べられなかった」と言っておられました。個人的に文献をあさったところ、保存食の梅干しは、今では塩分濃度15%~20%で作られます。減塩梅干しの場合は10%以下というものもあるでしょう。一方、冷蔵庫が普及していなかった明治時代の梅干しのレシピでは、塩分濃度30%で作るように指示されています。つまり、これだけ塩分濃度が高くないと長期保存がきかないんです。
ジャムも、今では果物に対し砂糖が1:0.5~1ですが、明治時代のレシピは1:2です。果物の2倍、砂糖をいれないと常温保存ができないんですね。ですから、ドラクエ11の世界では、保存食は恐ろしく甘い・しょっぱい・すっぱかったかもしれません。

戦争の時は家畜もつれて行こう

さて、ドラクエの世界ではものではなく人が大量に移動することもあります。その一例が魔物討伐とか戦争でしょう。将軍がいるくらいですから、数千人単位の軍事行動があってもおかしくありません。こんな時、食べ物をどうするか。以下のような方法が考えられます。

  • 主食:小麦粉を持っていって、水でこねてゆでる。パンは2度焼きして徹底して水分を抜く
  • 野菜:現地調達か塩漬け・酢漬け(ハーブやきのこならそこらへんに生えてる)
  • 肉:生きたまま持っていきましょう

2度焼きのパンというとイメージが湧きにくいですが、一度焼きあがったパンをもう一度焼くことで、固くなって水分が抜け、いわゆる乾パンに近い状態になります。これをラテン語で「ビス コクトゥス(2度焼きのパン)」と言い、ビスケットの語源となりました。メッチャ堅いんで、ミルクとかスープに浸して食べます。そして、肉類は干し肉を運ぶこともありますが、数千人単位の軍事行動だと、干し肉をキロ単位で運ぶより牛やヤギを生きたまんまつれて行ったほうが効率がいいのです。豚一頭から、約50~60kgの肉が取れますから、1人当たり200gとして、250人分の肉が賄えるでしょう。また、寒い地方だとラードは最高の防腐剤になります。ラードとお肉を一緒に炒めてそのまま冷やせば、水分が飛んだ肉のラードまぶしになります。そのまま鍋に放り込めばスープになるでしょう。ただし、サマディでは無理なので注意しましょう。

 

 

海と水路を活用せよ!!

 では、次に食料の輸送方法について紹介します。

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 ここで再登場、ドラクエ11の地図です。見る限り山が多く、平地が少ないという特徴があります。このような土地で、徒歩や馬で大量の食糧を運ぶのはとても大変です。それはなぜか、道を整備するのが滅茶苦茶大変だからです。ドラクエの世界の土木技術では、山を掘ってトンネルを作るのに、100年単位の時間がかかるでしょう。中世の山道をショートカットする技術といえば、「切り通し」という方法がありますが。この方法だと、人ひとり通るのがやっとの道を山の中に通すのがせいぜいです。つまり、大量の物資を輸送することができない。そこで、注目してほしいのが海です。海なら、船を使えば、大量の食糧を輸送できます。そして、ドラクエの乗り物と言えば船です。そういえば、デルカダールとサマディーを除き、ドラクエ11の主な都市は海に面しています。つまり、船による物資の輸送がしやすい場所にある、と言えます。じゃあ、デルカダールは船を活用しなかったかと言えばそうでもなく、王都のすぐ前にまで迫った大河を利用したんじゃないかと個人的に考えています。デルカダールは、灌漑によって豊かな国に生まれ変わったそうですが、この灌漑が、「もともとは細く、反乱も多かった川を広げ、船が通れるように整備した」と考えれば、豊かになった=内陸部まで船が入れるようになり、海から襲われることのない王都を作ることができたとも推測できるでしょう。

(川を魔物がさかのぼるとか、川に魔物が住み着くとか、そんなことは考えてはいけない)

ドラクエ11の航海術を考察する

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 こちら、ドラクエ11の船、シルビア号ちゃんです。深紅の帆が印象的ですが、これはおそらくカッター船という小型の帆船です。カッター船は一本マストの帆船で、こんな風に走ります。

https://www.youtube.com/watch?v=xnvdvvngsuo

帆船はマストが多いほど人手がいるので、アリスちゃんとシルビアさんだけではカッター船がせいぜいだったのかな、と考えていますが、この船、外輪があるんですよね。
外輪って動力補助なんですが、蒸気とかね、あの、エンジンで動かすんです。。。だからね、シルビア号って蒸気帆船かな?と思ったんですが、煙突もないしね。この船、動力は何かなー?って。そういえば、ドラクエ5とか、8も外輪船が出てきたんですが、どの船も煙突ないし、化石燃料で動くエンジンもないだろうし、どうやって動かすんですかね。この外輪。おや、誰か来たようです。(手記はここで途切れている)

まあ、細かいことはさておき、このクラスの帆船があるってことは、少なくともトン単位で物資は積めるでしょう。

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 こちら、杜若がコレクションしている江戸時代の大阪の地図です。大阪に住んでいる人なら分かると思いますが、長堀・道頓堀・現在の御堂筋にあたる部分が全部水路なんです。ここから何が分かるかと言うと、都市部でさえ、道路ではなく水路で物資を運んでいたということです。つまり、現在の自動車にあたるのが、ドラクエの世界では船なんです。まさに、流通のかなめと言っていいでしょう。おそらく、外海は帆船、都市内は手漕ぎの小型船で物資を流通させていたかもしれません。

 軍師ホメロスが魔物側についた恐ろしさ

 さて、こっからキャラブックのネタバレを含めた考察に入ります。ホメロスはデルカダール王国で海軍を指揮し、航海術に長けていたそうです。この航海術とは何かと言うと、「船を安全に航海させることができるルートを知っている」ということです。海には潮の流れと、風の吹き具合、海底の深さなどにより、安全に船が通れる場所が限られています。航海術とは、そのルートを探すことです。もし、ホメロスがデルカダール国の海軍の長として、全世界の海の安全な航路を知っていたとしたら?その情報を持ったまま、魔物側に寝返ったとしたら?これはもう、全世界の物流ルートが魔物側に握られたのと同じです。今まで安全に航海出来た場所に、強力な魔物を放つだけで、全世界の物流はストップします。そして、食料を輸入に頼っていた国から、ゆっくりと食糧不足で滅びていくことでしょう。ホメロスがグレイグに固執してなきゃ、全世界は大樹なんか落とさなくたって滅びてたよ)

ホメロスが毎日使っていたレモンの価格を考えてみよう

では最後に、ホメロス君の毎日の習慣で使っているレモンをデルカダールで買った場合、どのくらいの費用がかかるか、物流ルートを含めて考えてみましょう。
レモンは、厳冬期でも‐2℃以上である温暖な気候で育つ柑橘類です。現在でも、スペインとイタリアの一部以外、ヨーロッパではレモンは栽培されていません。(ちなみに生産量一位はインドな)。
ですから、冷涼高地のデルカダールではレモンは栽培できないでしょう。ドラクエ11の世界では、ダーハルーネ、ソルティコあたりがレモン栽培に適した気温であるようです。ですから、ソルティコ・ダーハルーネで育てられたレモンは、船に乗せられ、内海から川をさかのぼってデルカダールへ運ばれたと考えられます。つまり、この時点で、レモンは元の価格に運送料と人件費がプラスされているでしょう。
ここで、日本の江戸時代におけるみかんの運搬経路と費用を参考までに紹介します。みかんは和歌山など温暖な地域で収穫し、海路で江戸に運ばれて販売されました。このときの記録がきちんと残っていまして、ミカン22.5kgが1両(12~13万)で売れたとあります。ということは、1kgあたり5,500円です。めっちゃ高い。送料、バカにならない。
デルカダールでも同じようだった場合、レモン1個が120g前後なので、1個当たり500円になります。高い、高いぞ。(今、スーパーでアメリカ産のレモンは1個50~80円)
毎日500円以上のレモンを使ってお茶を飲む男。さすがホメロス
江戸時代の物流と架空世界のドラクエを比べるのはちょっと無理がありますが、両方帆船を使い、海を渡って運ばれたと考えると、当たらずとも遠からずと考えています。

 

以上です。

 

今回で食料の考察は一区切りします。次回は「住居」ドラクエの城について考察します。

 

 

穀物と果物から考察するドラクエ11の飲みもの

前回の記事にもたくさんのファボ・リツイートありがとうございました。ドラクエ11の食の考察も今回で3回目。今回は、アンケートの結果、ドラクエ11の世界に存在した可能性が高い飲み物について、主観的考察を行っていきます。なお、今回もブログ内の画像は様より許可を得て拝借しました。

穀物・芋類・果物があれば酒ができる

前回までの考察で、ドラクエ11の世界では少なくとも「麦」・「トウモロコシ」という穀類、「ジャガイモ」という芋類、「バナナ」や「パイナップル」という果物が存在していることが確認できました。

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また、この画にあるバナナの隣の緑色の葉っぱらしきもの、これは形からすると、どうやら「ブドウの葉」のようです。ブドウの葉はヨーロッパから中東にかけて、広く食用に用いられます。たとえば、トルコ料理の「ドルマ」はブドウの葉っぱにひき肉を包んで蒸したり煮たりする料理です。つまり、ドラクエ11の世界はブドウも存在している。では、これらの穀物・芋類・果物がある世界で作ることが可能な酒の一例をあげてみましょう。

醸造酒:ビール・ワイン・ミード(蜂蜜酒
蒸留酒:ウィスキー・ブランデー・カルバトス・グラッパ
混成酒:各種果実酒・薬酒など

はい、ずいぶんとたくさん作れますね。
作り方をざっと説明すると、醸造酒は糖類をアルコール発酵させて作るお酒、蒸留酒醸造酒を蒸留し、アルコール度を高めたお酒です。混成酒というのは、蒸留酒に果物や薬草をつけこんで成分を抽出したものです。梅酒も混成酒の一種といえば分かりやすいでしょう。
酒造の歴史は古く、ワインは紀元前6千年、ビールは紀元前4千年から作られていたという記録があります。つまり、ドラクエ11の世界の技術力でも十分に製造は可能です。というわけで、次は酒が作られた目的や飲用方法などを語っていきましょう。

ビールやワインは水代わり!!安全に飲める飲料は酒だ!!

ファンタジーを書く際、失念しがちなのが「水の安全性」です。現代では、簡単にそのままごくごく飲める水が手に入りますが、水道設備の発達していない世界では、井戸を掘るか、川の水を汲んできて飲用としていました。
当然、水質検査なんてしていないので、水には雑菌がうようよいます。殺菌には煮沸が最適ですが、手間がかかります。そこで、安全かつ簡単に飲める飲料として重宝されたのが、「ワイン」や「ビール」です。アルコールが入っていれば菌は繁殖しません。また、戦いの前にビールやワインを飲むと気分が高揚して、恐れず敵に突進できるという記述も残されています。また、ビールは麦が原料なので、「飲むパン」として栄養源としても重宝されました。パンがなくてもビールがあればカロリーは取れます。
(つまり、デルカダールの兵士はみんな酔っぱらった状態で敵陣突入していた可能性もある)

ビールやワインは混ぜものだらけ?

さて、ビールやワインは現代では以下のような材料で作られます。

ビール:麦芽・ホップ(日本では、米やコーンスターチなんかも入ってます)
ワイン:ブドウ

しかし、現実の世界では、ビールにホップが入るようになったのは15世紀くらいからです。それまでは、ハーブや各種スパイスをいれて風味を出しました。ちなみに、キリンビールでは、かつてグルートビールという中世のビールの再現をしています。その記事がこちら。

https://www.kirin.co.jp/entertainment/daigaku/HST/hst/no105/

材料は大麦・小麦・燕麦麦芽とスパイスと水。ホップ無し!!

どっしりとした味の、まさに「飲むパン」と言う感じだったそうです。
その後、十字軍の遠征によってスパイスが中東よりもたらせると、ビールには、セージ・ラベンダー・ローレル・松脂・パン粉なんかも加えられるようになります。

美味しんぼで某新聞記者が、ビールは麦芽とホップを使ったものだけが本物だと言っていますが、ビールの本場だって混ぜものだらけだ!!)

ちなみに、ホップを加えないとビールのアルコール度は8~10%と高くなり、保存性が増します。今でも、ハーブ入りビールは、ベルギーなどで今も作られており、トラピスタビールのシメイなどが有名です。
(なお、シメイはホップが入ってます。現在の酒税法では、ホップが入っていないものはビールと認められません。ホップが入っていないビールが飲みたい、と言う場合は、外国の発泡酒を探してみましょう。近いものが手にはいるかもしれません)

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シメイブルー。アルコール度9%。麦芽、ホップのほかオレンジピールが加えられている。甘い香りがするずっしりとしたエール。(ビールは筆者がおいしく最後までいただきました)

 また、中世のワインは松脂、コショウ・なんかも添加されています。これは保存性を高めるためで、無添加のワインは作られてから時間がたつにつれてどんどん酸化し、すっぱくて呑めたものではなくなります。

庶民の味方、果実酒とはちみつ酒

さて、中世のお酒の代表格、ワインやビールは各国の王や領主の農場、修道院で作られ、その大部分が王族や騎士、僧侶が消費し、庶民の口に入ることはめったにありませんでした。
では、庶民は何を飲んだか。ブドウ以外の果物で作ったワインやはちみつ酒です。
実は、ブドウから作るワインというのはキリスト教と密接に結びついています。キリスト教では、ワインがキリストの血の代わりなので、ミサにはなくてはならないものです。そこで、修道院ではブドウの栽培に適さない土地にまでブドウを植えてワインを作りました。
つまり、ドラクエの世界ではキリスト教がないので、無理にブドウでワインを作る必要がありません。「ここはナシの産地だから、ナシワインが有名なんだ」なんていう会話があってもいいんです。クレイモランなんか寒くてブドウよりリンゴの方がよく育ちそうなんで、リンゴ酒(シードル)なんか作ってもいいですね。現実世界でも、ブドウのワイン以外は税率が低いので、庶民はナシワイン、シードルなんかを作って飲んでいました。

ホメロスがブドウ以外から作られた酒を飲んで、「貧乏人の酒だな」とあざ笑う、なんてことがあったかもしれませんね)

 

はちみつ酒というのは、世界最古のお酒です。はちみつと水、ドライイーストを混ぜて放置しておくだけで作れます。ただし、現在の日本ではちみつ酒を造ると酒税法に引っかかるので作れません。造っちゃダメですよ。
作り方は、はちみつ1:水4:イースト2gだよ。発酵は1週間くらいで終わるよ。ビールみたいな味になるから、レモンを絞ると飲みやすいよ。(ええ、筆者は作ってませんよ。はちみつ酒なんか。作ってないよ!!作ってないよ!!)

グロッタの町の安居酒屋では、はちみつ酒、シードル、ナシワインなんかのラインナップだったかかもしれません。

けがの手当てにも使える蒸留酒

さて、ウィスキーに代表される「蒸留酒」は現実の世界では15世紀くらいから、登場します。世界最古の蒸留酒はもっと昔からあったらしいのですが、人々が「蒸留酒」を日常的に飲用したのは、その頃からです。
蒸留酒は、大麦・小麦から作られる「ウィスキー」・ブドウから作られる「ブランデー」・リンゴから作られる「カルバトス」ジャガイモから作られる「シュナップス」などがあります。
アルコール度はいずれも40度以上、作るのに手間がかかるので、とても高価でした。
では、庶民は蒸留酒なんて飲めなかったのかというとそうでもありません。
赤ワインを絞ったブドウの搾りかすをさらに絞って蒸留した「グラッパ」というお酒です。別名カストリブランデーといい、日本のカストリ焼酎の同類です。ブドウの風味豊かな無色透明なお酒で、昔は冬に暖を取るために用いられました。
ドラクエの世界でも、これらの蒸留酒があるかもしれません。ちなみに、蒸留酒はけがの手当てにも使われました。

(現在、グラッパはイタリアで作られたカストリブランデーのみを指す。フランスでも全く同じものが作られているが、こちらはマールという名前)

 

未成年は後ビールとサイダーで

ここまでアルコール飲料について説明してきましたが、ではお酒が飲めない人や未成年はどうしたのか。これに関しては資料が見つからなかったのですが、小説などでは「後ビール」という飲み物が登場します。これは、ビールを入れた樽の中に水を入れ、それを飲むものです。おいしくもなさそうなんですが、中世を舞台にした小説では、未成年の使用人の定番の飲みものとして登場します。
また、リンゴを水に浸けて果汁を絞りだし、発酵を途中で止めるとサイダーができます。ヨーロッパでアップルサイダーというと、リンゴ酒をさすんですが、これはアルコール度が2~3%と低いもので、中世では子供の飲みものだったかもしれません。
ドラクエの世界でもあっても不思議はありません。

 

ドラクエの世界に茶は存在するのか?

さて、ノンアルコール飲料の代表格と言えば「お茶」です。「お茶」はツバキ科ツバキ属の常緑樹、「茶ノ木」の葉を揉む・発酵させる・乾かすという工程を経て作ります。「緑茶」「紅茶」「ウーロン茶」が代表的なもので、中国では3世紀から飲用が始まったと言われています。つまり、ドラクエの世界に茶があっても全く不思議はありません。茶は、亜熱帯性の植物なので、11の世界では、ホムラの里とか、ナギムナー村あたりで栽培されていた可能性があります。
また、世界では、「トウモロコシ」や「麦」の種子を煮出して飲む「コーン茶」「麦茶」なんてものもありますので、ドラクエの世界でも、お茶以外の植物を煮出したものを「××茶」として飲んでいた可能性があります。個人的には、トルコに実在する「ミント茶(ミントを煮出す)」「ウラムル茶(菩提樹の花を煮出す)」あたりがファンタジーの世界っぽくていいなーと思っています。

 

 

以上、長々とドラクエの世界に存在していたかもしれない飲料について考察してみました。多分、ビールとワインはあったでしょう。それに、果汁やスパイスを加えていろいろな飲み物を作っていたかもしれません。そう考えると、想像が広がりますね。以上、飲み物に関する考察でした。

 

 

 

 

 

 

 



 

 

 

冷徹 ホメロスのふわふわ白パンから考察する酪農と砂糖事情

前回の記事にたくさんのいいねとリツイートありがとうございました。今回は、「考察、ドラクエ11の世界の食」2回目、酪農・砂糖について考察していきます。なお、ブログ内で使用している画像は、様より許可を得て拝借しました。

7月7日追記

マシュマロより「パンを作るには油脂が必要、卵は特に不必要」との指摘を受けました。改めて白パンのレシピを確認したところ、確かにショートニングなどの油脂が必要で、卵はレシピに入っていませんでした。訂正の上、あらためてバターについての項目を追加しました。ご指摘、ありがとうございます。

 

ホメロスのふわふわ白パンを作るために必要な材料とは?

「冷徹、ホメロスのふわふわ白パン」とは、2017年にスクエア・エニックスカフェとドラクエ11のコラボが実施されたときのメニューの1つです。私は食べてはいないんですが、生クリームたっぷりのフルーツサンドウィッチでしたね。
その後、ホメロスの好物が公式で「フルーツサンドウィッチ」と発表されたので、ドラクエ11の世界には「フルーツサンドウィッチ」という食べ物が存在していることになります。
では、フルーツサンドウィッチは何からできているか、ちょっと分解してみましょう。

  • パン:小麦・塩・砂糖・イースト菌・油脂類(バター・ショートニングなど)
  • クリーム:乳・砂糖
  • 果物:リンゴ・バナナ・みかん・イチゴなど

つまり、ドラクエ11の世界にはフルーツサンドウィッチができる、これだけの食材が存在していることになります。では、ここからドラクエ11の世界の酪農と砂糖について紐解いてみましょう。

麦の栽培は畜産とセットである

前回の考察で、バンデルフォン地方では大規模な麦の生産が行われていると考察しました。また、ドラクエの世界ではパンが主食のようなので、麦の生産は世界中で行われていると推測できます。
さて、植物が大きく育つためには、窒素・リン・カリウムが必要です。これは肥料の主成分です。野菜や穀物・果物を育てるには肥料が欠かせません。いわゆる「肥えた土地」というのは、この3つの成分が多く含まれている場所です。特に、麦は肥料で格段に収穫量が変わる穀物なので、肥料なしで育てることは不可能でしょう(稲は元の土地が肥えていれば、肥料があまりなくても育つ)。
では、この3つの成分を含む肥料は何から作ればいいか。それは、家畜や人間の排泄物、いわゆる「うんこ」です。
牛・豚・鶏などの排泄物をおがくず、もみ殻などと混ぜて発酵させると堆肥になります。また、牛は麦畑を耕作する際、鍬(すき)をひいてもらいます。
さらに、ドラクエ11の世界の土壌がヨーロッパと同じタイプであると仮定すると、連作障害を防ぎ、土壌を回復させるために定期的に休耕させる必要があります。このとき、休耕地にクローバーや牧草を植えて牛や豚なんかに食べさせることにより、土壌回復と畜産を同時に行います。いわゆる三圃制農業ってやつです。(世界史で習ったかな?これが発展したのがノーフォーク式農業だよ)
つまり、麦畑あるところに畜産あり。畜産あるところに酪農あり、ということで、麦畑があるところなら必ず牛や豚が飼われている、はずです。
なお、家畜は春に生まれ、夏~秋にかけて牧草や畑の中にいるミミズなどを食べて育ち、秋の初めに繁殖用のものを残して全部食肉になります。人々はこの肉を食べて冬を乗り切るのです。

白パンは高級食材?

さて、これで麦と乳は同じ場所で生産ができることが可能だということが分かりました。次に注目したいのは「白パン」というキーワードです。

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 こちら、メダル女学園の学生食堂のキャプチャーですが、白っぽいパンがありますね。多分これが白パンだと思われます。「アルプスの少女ハイジ」を見たことのある人ならば、白パン=柔らかくふわふわしたパン。高級品。というイメージを持っていることもあるでしょう。
実は、食用の麦には大きく分けて以下のような種類があります。

  • 小麦:いわゆる小麦粉の元、麦類の中では寒さに弱い
  • ライ麦:寒冷地で育つ。小麦よりグルテンが少なくライ麦粉でパンを焼くとどっしりとした黒っぽいパンができる。
  • 大麦:麦みそ、麦飯、ビール、麦茶の材料

つまり、小麦は麦類の中でも温暖な地域でしか栽培ができない→収穫量が少なく、小麦を材料としたふわふわ白パンは高級食材?という推測も可能です。特に、デルカダールは標高が高いので、小麦粉を使ったふわふわな白パンは限られた人しか口にできなかったかもしれません。

乳を出すのは牛だけではない

では次に、クリームの材料、乳について考察していきましょう。乳は哺乳類が子を育てるために出すものです。乳=牛乳というイメージが強いですが、哺乳類の家畜であれば豚・ヤギ・羊でも乳を出すことが可能です。さて、ここで家畜の乳に含まれる乳脂肪分を比較してみます。

  • 牛:3.5%
  • ヤギ:2.9%
  • 羊:8.4%

羊は牛の倍以上の脂肪分がありますね。なんでこんな比較をしたかというと、乳脂肪分が高い乳ほどクリームを作るのが簡単だからです。乳を遠心分離器にかけて振り回すと脂肪分と水分に分離して生クリームができます。脂肪分が高い乳ほど生クリームがたっぷりとできるでしょう。現在、日本では牛の乳以外家畜の乳はほぼ飲用されていませんが、ヨーロッパではヤギ乳、羊乳も飲用され、チーズの原料にもなっています。しかも、牛に比べるとヤギや羊は標高が高く貧栄養の地でも育ちやく、さらに体毛が衣料になり、肉も食用可能です。(フルーツサンドウィッチの生クリームが羊乳で作られててもいいじゃないか!!)

というわけで、ドラクエ11の世界では生クリームがどんな家畜の乳で作られるのか、想像するのも楽しいかもしれません。

ちなみに、

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ダーハルーネの街にはこのようなどう見てもイチゴのショートケーキにしか見えないスイーツもありますが、ショートケーキは日本生まれで、欧米に逆輸入されたケーキです。(もしかしたら、日本の誰かがトラックにぶつかって11の世界に転生してケーキ職人になったかもしれません)

ドラクエ11の世界にイチゴがあるということはこれで分かりますね。

バターがあれば生クリームは存在している

さて、牛乳を遠心分離器にかけクリーム(乳脂肪分)と水分に分離する方法ですが、これは古代ギリシャよりバターを作るために行われていました。牛乳を攪拌し、生クリームを分離→さらに生クリームを振ることにより固形の乳脂肪分と水分を分離→固形の乳脂肪分に塩を加える。これが、バターの大雑把な作り方です。生クリームからバターを作る方法は有名ですが、牛乳からクリームを作るには、絞っただけの未加工な牛乳が必要です。現在、スーパーで売られている牛乳は出荷前にホモジナイズ処理がされており、脂肪分が細かく均一に牛乳内に分離しているので、牛乳から生クリームを作るのは絶対不可能ではありませんが、難しいでしょう。

なお、これは全くの余談でありますが、皇室の御料牧場で生産される牛乳は脂肪分が高く、殺菌のみのノンホモジナイズで出荷されるので、表面に乳脂肪分の膜が張ることもあるとか。こんな牛乳なら上質な生クリームが取れそうです。

砂糖はサマディの特産品?

さて、フルーツサンドウィッチや、スイーツに欠かせない調味料と言えば砂糖です。砂糖は、サトウキビ及びテンサイ(サトウダイコン)からできます。サトウキビから砂糖を生成する技術は、約1,000年くらい前からありましたが、テンサイから砂糖が生成できるようになったのは、18世紀のことです。
ゆえに、ドラクエの世界では砂糖はサトウキビから作られると仮定した方が自然でしょう。
さて、サトウキビは14℃~30℃までの温暖な気候で、水が豊富な地域で栽培されます。ということで、ドラクエ11の世界では、サマディ領内のダーハルーネ・ナギの村近辺あたりで作られていたかもしれません。
ダーハルーネ近辺でサトウキビ栽培が行われていた場合、砂糖が比較的容易に手に入りやすいため、スイーツが名物になったとしてもおかしくはないでしょう。
また、砂漠の真ん中にあって特に産業もなさそうな場所でサマディー王国が栄えているのは、砂糖生産と輸出のおかげかもしれません。現実の世界でも、アラブ近辺の国はヨーロッパに13世紀くらいから砂糖を輸出しています。

石油を使った機械類がないドラクエの世界に石油王は生まれない)

果物は世界を周る

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こちら、メダ女のキッチンのキャプチャーですが、バナナがありますね。ドラクエ11の世界ではどこの町でもパイナップルやリンゴ、バナナなんかの果物が見て取れます。つまり、果物は盛んに輸入・輸出が行われていたかもしれません。冷涼な気候のデルカダールでは、リンゴやベリー類がとれた可能性があります。

フルーツサンドウィッチは富と権力の証?

さて、話をフルーツサンドウィッチに戻します。フルーツサンドウィッチを作る白パン、生クリーム、果物はどれもデルカダールでも入手可能です。
ただし、標高が高くジャガイモが主食であった可能性が高いデルカダールでは、温暖な気候でしか栽培できない小麦粉で作られた白パン、家畜の乳をふんだんに使った生クリーム、そして果物を使ったフルーツサンドウィッチは、決して安い食べ物ではなかったと思われます。
少なくともジャガイモサラダの数十倍の値段がするんじゃないかなーと思います。そのため、フルーツサンドウィッチはごく限られた上流階級の人しか口にできなかったかもしれません。つまり、フルーツサンドウィッチは富と権力の味。ホメロスが好物だった理由も、味が大好きというより、自分の手に入れた力を実感するアイテムではなかったか?と想像してしまいます。

 

さて、次回はドラクエ11の世界の食糧事情第3回、食料は世界を巡る。輸出と輸入を支えた流通経路を考察する、ということで、食に絡めてドラクエ11の世界の物資運搬について考察します。